2024年3月18日月曜日

3月18日月曜日/散文の基本

◇ 東京駅

 午前中から都内に。今日も風が強い。今日から寒くなるのかと思っていたが、まだ暖かいようだ。横浜から東海道線に乗り、東京駅まで。東京駅の丸の内側に出ることが意外とひさしぶりだなという気がした。夕方になり、遅めの昼食。地下通路にあるC&Cに入り、三元豚ロースかつカレーを食べた。750円。新大手町ビルのドトールに入り、ひと休み。モバイルバッテリーを使うようになり、そのおかげで、充電できる店をわざわざ探さなくていい自由を得られた。ラジオを聴きながら少し眠る。

◇ 読書

 帰りの電車内で、図書館で借りている、阿部昭「新編 散文の基本」を読み終えた。2022年刊、中公文庫。親本は1981年刊。文庫は、親本に関連エッセイ、対談を増補し、再編集したもの。阿部昭という作家は、岩波新書の「短編小説礼讃」をずいぶん前に読んだことがあり、それで知っているだけの作家だったが、この本を図書館で見つけ、読んでみたら大変面白かった。ここに書かれている文章観には、好きな考えかた、惹きつけられる考えかたが多々ある。自分の考えが補強されるような手応えが得られた気になった。後半は短編小説論。モーパッサン、チェーホフ、ルナール、国木田独歩、石川啄木、志賀直哉、菊池寛、芥川龍之介、梶井基次郎、三浦哲郎について論じられている。以下、気になった箇所をいくつか引用。

P12-13「それはともかく、私がいぶかるのは「自分を表現する」というようなすこぶる現代風の言いまわしにひそんでいる嘘についてである。ちょっと耳にしただけでも、この言い方にはずいぶん病的なニュアンスがあることがわかる。自分の中にある何かを言葉にしたくてたまらないといいたげなこの言い方には、何をすればよいのかがまるで判っていないための不安や、いらいらした気分や、自信のなさなどが隠されている。(略)ところが、書くということは、そんなあやふやな症状とは反対に、きわめて簡単かつ自明のことで、紙と鉛筆さえあればいいわけだから。」

P20-21「だらだらと長ったらしく、あるいはくどくどとしつっこく、またデコデコと飾り立てた文章は、読むのも苦手だが、これもいまはじまったことではないから直りようがない。どうにでもお好きなようにといった格好でぶら下がっている形容詞というやつが、私は大嫌いだ。あとは、新かな、当用漢字で別に不自由しない。ザッパクな外来語、流行語のたぐいも、必要とあればどしどし取り入れたいと思っている。」

P29「小説も批評もむずかしくなる一方で、よほど専門的な関心がないとついて行けないようなものが多い。論議が論議を呼び、発明が発明を生んで、現代文学はますます専門家のものになってゆく。伝統的な書き方をかるく一蹴したような〝新しい〟小説が出てくると、その尻馬に乗った〝新しい〟批評家が「小説」が解体してゆくありさまを克明に分析して見せてくれる……。実験とか冒険とかいう名で呼ばれる現代文学のさまざまな試みが、今日ではもうそんなふうにしか人間をとらえがたいと言いたげな苦しげな表情をしていることに、読者もだんだん慣れてゆくのだろうか。」

P36「小説を読みながら、あるいは書きながら、私はよく「日記」と「手紙」というこの不朽のジャンルについて考える。率直な真実と、じかに相手に伝わる肉声という点で、この二つはあらゆる散文の土台である。」

P43-44「原則としていえば、好ましい言葉・嫌悪すべき言葉などというものがあるはずがない。好かれている、あるいは、嫌われているのは、言葉ではない。問題は、言葉そのものになく、そこに封じこめられた使い手(運び手)のニュアンスにあるのはわかりきったことだ。彼の自発性がどの程度のしろものであるのか、どの程度にその言葉を信用しているのか、軽蔑しているのか、その仕方が過不足ないものであるかどうか、等々といったことにかかっている。俗に言葉にうるさい趣味があるといわれる人が書いた文章というのは、すぐにわかるものである。私は勿論、そういう人たちの審美眼や潔癖には敬意を表するけれども、それこそ積年の恨みをのんだようなぐあいに文中に配置された或る一つのめざましい言葉が、散文の自由な流れをせきとめるように出っぱって、そこに小さな溜り水を作ってしまっているのを残念に思うことがある。その場所に、その言葉の代りに、もっと別の――その人から見れば――ずっとつまらない言葉が置かれてあったほうがよかったろうに、と思うことがある。」

◇ テレビ・雑誌

 夜遅くに帰宅し、録画していたテレビ番組をいくつか。昨日の「ワイドナショー」は、鈴木おさむが初登場のほか、今田耕司、武田鉄矢、ベッキーというメンバー。鈴木おさむがここで初めて旧ジャニーズ問題について、そして、松本人志の休業についても語った。番組後半には「R-1」チャンピオンの街裏ぴんくが登場した。

 今朝の「ブギウギ」では、美空ひばりをモデルにしたような水城アユミという歌手が出てきたのだが、母が蒼井優という設定になっていて、事実とは違う架空の人物になっている。和田勉のような人物も出てきて、これは中村倫也が演じている。

 楽天マガジンで雑誌のチェックをすると、「週刊ポスト」には「不適切にもほどがある!」効果で「トゥナイト」の特集記事があり、乱一世、南美希子、雪野智世の座談会が載っている。横山剣さんの連載では、浅野ゆう子の「セクシー・バス・ストップ」について書かれていた。熱海五郎一座の楽屋で浅野ゆう子とあいさつをしたそうだ。「サイゾー」の特集は「新しいテレビと芸能界」。コメカ氏がテレビとお笑いの関係を批評的に語っている。取材・構成はおぐらりゅうじ。更科修一郎による「不適切」およびクドカン論も面白かった。

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